ストレージの「容量詐欺」疑惑、感じたことありませんか?
パソコンやスマホのストレージ容量を確認したとき、「え?なんでこんなに少ないの?」と違和感を覚えたことは誰しも一度はあるはず…。
たとえば1TB(テラバイト)の外付けHDDを買ったはずなのに、パソコンの画面では「931GB」と表示される──。
わりと「あるある」ですね。
しかも、SSDでも同じ現象が発生します。
512GBモデルを買ったのに、実際は476GBしか使えない。

「まさか偽物つかまされた?」「詐欺やん!」なんて思うこともあるかもしれません。
ちなみにネット上でもよく見かけるのが、「容量削って儲けようとしてるんじゃないか」「フォーマットで減るって言うけど、説明不足すぎる」「これ消費者庁案件ちゃう?」…みたいな声です。
気持ちはめっちゃわかります。
せっかく高いお金出して買ったストレージ、カタログ表記と実際の容量が違ってたらちょっとイラっとしますよね。
でも実は、これにはちゃんとしたカラクリがあるんです。
新品HDDの容量が減ってるのはなぜ?
原因は「容量の単位の違い」
メーカーが容量を水増ししているわけではありません。
ストレージの世界には「キロバイト」と「キビバイト」という、ややこしい単位の問題が存在しています。
この単位の違いが、容量表示のズレを生み出してます。
一見細かい話に思えるかもしれませんが、実はこれ、ストレージだけでなくパソコン・スマホ・クラウドサービス・ゲーム機・録画機器など、ありとあらゆるデジタル機器に関係してくる話。
知っておくと得する知識
容量の単位について知っておくと、ストレージ選びの時に「なるほどね」と冷静に判断できるようになります。
また、クラウド契約時の料金プラン選びや、バックアップ用ストレージの選定でも役立ちます。
というわけで今回は、この「容量の単位問題」について、少しマニアックだけど実はかなり重要なポイントを、できるだけわかりやすく解説していきます。
そもそもKB / KiBとは?
キロバイト?キビバイト?そもそも何が違うの?
てかキビバイトって何…?聞き慣れないんだけど…。
これが今回の話の根っこです。
容量が減ってる原因は、実は「単位の定義の違い」にあります。
この話をちゃんと理解すると、ストレージの謎がかなりスッキリします。
世の中の「キロ」は基本1000
まず普通の単位の感覚で言えば、「キロ=1000」。
これは誰でも学校で習いましたよね。
1キロメートル → 1000メートル
1キログラム → 1000グラム
ここまでは誰も混乱しません。
でもコンピュータは2進法の世界。数字のカウント方法が違います。
コンピュータは「0」と「1」だけで動く2進法で設計されています。
このため、区切りの数字も「2の累乗(2の何乗か)」で考えるのが自然なんです。
実際に計算してみると、
2の10乗 = 1024
つまり、コンピュータ屋さんにとっては、「キロ=1024」 というのがずっと使われてきた数字でした。
「じゃあどっちが正しいの?」問題
ここでややこしくなるのが、技術屋(コンピュータの中の人)と、メーカー(ストレージを売る人たち)の感覚のズレです。
技術屋:「キロは1024でしょ」
メーカー:「いや、消費者にわかりやすく1000でいいでしょ」
こうして長年、キロバイトは何バイトなのか問題がくすぶり続けてきたわけです。
国際機関が「キビバイト」を作った
あまりにも紛らわしいので、1998年に国際電気標準会議(IEC)が整理に乗り出しました。
ここで新たに作られたのが、今の「KiB(キビバイト)」という単位です。
単位 | 読み方 | バイト数 |
---|---|---|
KB | キロバイト | 1000バイト |
KiB | キビバイト | 1024バイト |
本来は今こう区別しましょうね、というのが公式のルールになっています。
でも世の中は結局ごちゃ混ぜ。
この単位、実はまだまだ世間では定着していません。
- Windows → 基本1024ベースで表示(でも「KB」と表記する)
- ストレージメーカー → 1000バイト基準で販売表記
- Linuxや一部ソフト → KiB, MiB表記も徐々に増加中
- 一般ユーザー → ほぼ意識せず
つまり今の状況は、表記だけ1000、内部計算は1024 みたいな中途半端な状態になってるわけです。

単位のズレが「容量が減った!」の正体
というわけで、HDDやSSDでよく起きる容量差は「単位の定義の違い」が原因というわけです。
HDD/SSDメーカーのカラクリ
メーカーはなぜ「1000」で表記するのか?
さて、ここが一般ユーザーの最大の疑問ポイントだと思います。
「なんでストレージメーカーは1000バイト=1KBっていう表記を採用してるの?」
「最初から1024で計算してくれたら混乱せんやん?」
…実はこれ、マーケティング上の都合がかなり色濃く出ています。
1000バイト基準の方が数字が大きく見える
数字のマジックってやつですね。
例えば同じ容量でも、
- 1TB(1000GB表記)
- 実際のOS表示 → 約931GB(1024ベース)
こうなります。(すげぇ)
メーカー側としては、当然「たくさん入るように見せたい」わけで、販売スペック上の数字が大きい方が消費者の購買意欲に刺さる、という背景があります。
わかりやすい例で言えば、「タウリン3000mg配合!」とかありますけど、g換算すると「3g」です。
3000mgのほうがインパクトありますよね。あれと同じような感覚です。
実は昔はもっとカオスだった
実はこの「1000か1024か問題」、過去にはメーカーによってバラバラだった時代もあります。
- 一部メーカーは1024基準で表記してた時代もあった
- でも結局、世界的に「1000バイト=1KB」の表記が販売上わかりやすいという流れに収束
ユーザーの混乱を完全に置き去りにして、メーカー間で”暗黙の標準”ができていきました。
ちなみに、実は多くの国で「1000バイト=1KBで表記して良い」という法律やガイドラインが整備されています。
つまりメーカーは詐欺をしているわけではないのです。(だから消費者庁案件にはなりません)
でもユーザーからすると「ちょっと損した気分…」だって、表記よりも少ないわけですから…。
500mlのミネラルウォーター買ったら485mlしか入っていなかった、そんな感じです。

ちなみに実際容量は以下の表のようになります。
スペック表記 | 実際のOS表示 |
---|---|
1TB | 約931GB |
512GB | 約476GB |
256GB | 約238GB |
数字としてはこんな感じで削られて見えます。
これが例の「容量詐欺っぽく見える原因」なんですね。
しかし、こうして見てみると結構違いますね…削られてるな…。
結局、誰も説明してくれない…だから混乱は続く
こうした単位ズレの説明は、商品ページでも取扱説明書でも基本ほとんど説明されません。だから知らないまま「なんで容量減るの?」となる人が今も大量発生してます。
隅っこに小さく「※実容量は異なります」って書いてあるパターンもありますが、まぁ、そこまで読む人なんて極わずか。
「ちゃんと書いてるやん」って言われれば、それまでなんですが…。
単位問題がここまで定着しなかった理由
さて、「キロは1000なの?1024なの?」問題。
実はもう20年以上前から指摘されてるのに、いまだに一般の人に浸透していません。
なぜここまでややこしいまま放置され続けてるのか?その理由をもうちょっと深掘りしていきましょう。
① そもそも一般ユーザーは気にしていない
自分もそうなんですが、ほとんどの人は、ストレージ容量をそこまで細かく計算して購入していません。
- 何GB入るの?
- 動画何本保存できるの?
- 写真どれくらい入る?
- あっ、これやったらゲームインストールできるやん!
このレベルの感覚で十分だから、「キビバイト?なにそれ?」状態がずっと続いています。
ユーザー側に知識要求しないまま、メーカー側も「まぁ説明省いてもいいでしょ」という空気感が醸成されてしまったわけです。
② OS側も統一できていない
これ結構問題だと思うのですが、OSごとのバラバラ表記。
OS | 表示の仕方 |
---|---|
Windows | 1024基準で計算するが「GB」と表記(混乱の温床) |
Mac(昔のバージョン) | 実は1024だった時期あり |
Mac(現行) | 1000基準に切り替わった |
Linux | KiB, MiB表記を採用する場合も増えてきた |
「Windowsは1024だけど、表記は1000っぽい単位名を使う」
「Macは1000基準に鞍替えした」
「Linuxは技術者向けだからKiBも出す」
これ、誰が混乱せずに理解できるの?状態です。
③ 販売上「見栄えが良い」方が勝った
メーカーとしては当然「少しでも大きな数字を出した方が売りやすい」わけで、1000バイト基準は営業的にも宣伝的にもメリットが大きいんです。
たとえば
- 「512GB SSD!」 → まぁまぁやな!(なんとなく安心感がある)
- 「実質476GBです」 → マジで!?(ちょっと損した気分になる)
この人間心理を突いて、1000基準表記は定着していきました。
400円だと高いのに398円だと安く見えちゃう…スーパーなんかでよく見かける光景ですね。
冷静に考えると2円の差なんですが、その2円差で売上が変わります。
④ 結果、曖昧なまま放置される文化が完成
技術者は分かっている。
メーカーは1000基準で出す。
OSはバラバラ。
ユーザーは「まぁそんなもんか」で済ませる。
この構造が20年以上続いてるわけです。
でも、この「容量が減る理由」を知っていると、無駄にストレスを感じなくなります。
たとえばクラウドストレージ契約やPC買い替えのときも「実質容量はこれくらいになるな」と事前に見積もれるようになります。
知らないと「また容量詐欺された!」って毎回モヤっとしますけどね。
もっと細かい単位も存在する
実は「KiB」だけじゃ終わらない
ここまでで「キロバイト vs キビバイト」の話は理解できたと思います。
でも実はこの先も、さらに細かい単位が存在しています。
ちなみに、容量の世界は上にいくほど、この1000派 vs 1024派の分裂がどんどん続いていく構造になってます。
代表的な単位をまとめてみる
単位(SI基準) | 1000基準 | 1024基準(IEC基準) |
---|---|---|
KB(キロバイト) | 1,000バイト | KiB(キビバイト):1,024バイト |
MB(メガバイト) | 1,000,000バイト | MiB(メビバイト):1,048,576バイト |
GB(ギガバイト) | 1,000,000,000バイト | GiB(ギビバイト):1,073,741,824バイト |
TB(テラバイト) | 1,000,000,000,000バイト | TiB(テビバイト):1,099,511,627,776バイト |
ご覧の通り、容量が大きくなるほど差がどんどん広がっていきます。
大容量のストレージを購入すると、その分だけ実容量は減っている…うーん、ちょっと納得いきませんね…。
実際にどれくらいズレるのか?
たとえば「1TBの外付けHDD」を購入したとします。で、計算すると…
- 1TB(メーカー表記)=1,000,000,000,000バイト
- これをOSが1024で計算 → 約931GiBになる
その差、約70GB!!
70GBって、大ボリュームのゲームがまるまるインストール可能な容量…。
つまり、容量が大きくなるほど“削られた感”が増していくわけです。

単位は増えたが、世間はついてこれない
この細かいKiB、MiB、GiB、TiB…
実は国際的にはもう25年以上前から標準化されてるのに、ほとんどの人は今でも「GB」でざっくり把握してるのが現実です。
- メーカーも基本は1000表記のまま
- OSも中途半端に混在
- 消費者は「あーまた減ってるわ」程度で流す
という状況がいまだに続いています。
マニア層だけが正確に使い分けている
実際、この細かい表記を日常的に使ってるのは
- サーバー管理者
- ストレージエンジニア
- システム屋
- Linuxユーザー
- 一部のガジェット好き
くらいだったりします。
一般の感覚ではそこまで細かく気にしていないというのが実情なんですね。
最新のSSDでもクラウドサービスでも、この単位ズレは基本的に今後も残り続けると思われます。
むしろ容量が増えれば増えるほど「また減っとるやん!」と感じる未来がやってくるわけです。
業界あるある・裏話編
結局、ストレージ業界はこのままでいいと思っている
正直言うと、この「容量ズレ問題」──
もう誰も本気で直そうとしていません。(多分)
理由はめちゃくちゃシンプルです。
- メーカー → 数字が大きい方が売りやすい
- ユーザー → なんとなく慣れてきた。そもそも気にしてない
- OSベンダー → 統一するコストが高い
- 国際機関 → 一応ルールは決めたけど誰も強制できない
「まぁ…このままでいいか…」という空気感が完全に出来上がっています。
広告表記は基本“都合のいい方”を使う
どの業界でも共通することなのですが、ストレージだけでなく、広告やパッケージの世界は「なるべく大きい数字を使う」文化が根付いています。
- ネット回線 → 理論値の最大速度をドヤ顔表記(ベストエフォート)
- スマホのバッテリー容量 → mAhだけど使い方次第で全然持たない
- ストレージ → 1000基準の容量をアピール
つまり、売る側は常に“見栄え重視”なのが世の常なんです。
SSDやクラウドでも普通に発生している
実はこの容量ズレ現象、HDDだけでなくSSD・クラウドストレージ・NAS・ゲーム機の容量でも普通に起きています。
- PS5の「825GB SSD(初期型)」実質使えるのは667GBくらい
- Googleドライブの「100GBプラン」も若干ズレる
- iPhoneのストレージも若干余裕を持たせて表記される
もうどのデバイスでも当たり前に発生している「業界慣習」になってるんですね。
で、我々ユーザーも「そんなもんか」と慣れてしまっています。
一番ややこしいのはパソコン初心者の購入相談
これはしょうがないですが、パソコン/電子機器の初心者が最初に思うのがこれ。
「買ったら容量が減ってるんですけど、これ初期不良ですか?」
いや、正常なんです。
でも説明するたびにこの単位の話をすると…めっちゃ長くなるし理解するのに時間を要します。
これ、PCサポート現場では地味にあるあるネタだったりします。
慣れてくると「また減ってるな」「まぁそんなもんやろ」みたいな感じで、
ストレージ容量詐欺(※詐欺ではない)問題に慣れていく文化がユーザー側に浸透してきています。
これがある意味、長年の業界妥協の産物なんです。
表記と実際の容量が異なるのは「単位の定義の違い」が原因
ここまで見てきた通り、HDDやSSDの「買ったら容量が減ってる問題」は、
メーカーの悪意とか詐欺ではなく(でも多分、少し多く見せたい気持ちはある)、単位の定義の違いが原因でした。
- ストレージ業界 → 1000バイト基準で表記
- OS → 1024バイト基準で表示
- ユーザー → 「減っとるやん!」と毎回思う
この噛み合わない三者が、今も延々と平行線をたどっています。
でも、ちょっとした豆知識として持っておくと便利。無駄にイライラせず、かつ冷静に受け止めることができます。
また、この単位の違いを知っておくと、今後こういう場面で役立ちます。
- ストレージ容量を選ぶとき
- クラウドプラン契約時
- ゲーム機の空き容量確認時
- 「パッケージ表記と違う!」というストレスが減る
IT系の人ならドヤ顔で説明できる小ネタにもなります。
正直、この問題は今後も放置され続ける可能性大
IECがいくら「KiB、MiB、GiBを使おう」と提唱しても、すでに1000表記文化が定着しすぎて、現場はほぼ無風です。「知ってる人だけニヤっとしながら受け入れる世界」──それが今のストレージ容量表示のリアルです。
ですが…今後はもっとストレージの大容量化が進むでしょう。
今でさえTB(テラバイト)は当たり前なのにPB(ペタバイト)、EB(エクサバイト)の単位が普及してくると、その分、表記してある容量と実際の容量の差も大きく広がります。
最後に一言まとめ
ストレージ容量が減ってるのは、詐欺でもバグでもなく、単位のすれ違い。
でもね…もうちょっとわかりやすく、パッケージ/説明書/ページに大きく書いてもいいんじゃないでしょうか…
と言いつつも、個人的にの4TBのバックアップ用サーバをポチったのでした。