量子コンピュータって、ものすごく高性能で、現在のPCを遥かに凌駕する計算能力。
発展途上ではあるが、将来的に量子コンピュータが普及し生活が一変する…なんてイメージがあるかもしれません。
また、量子コンピュータを使えば重たいゲームも爆速でサクサク動き、レイトレやリアルタイム8K/120fps描画も余裕なのでは?なんて思ってしまいます。
今回は量子コンピュータとは何か?を、なるべく専門用語を使わずわかりやすく、またゲームとの相性についてもご紹介します。
そもそも量子コンピュータとは?
量子コンピュータは、今の普通のコンピュータ(古典コンピュータ)とは全く異なる仕組みで動く「次世代のコンピュータ」です。
普通のコンピュータは、0か1かの「ビット」で情報を処理しますが、量子コンピュータは「量子ビット(キュービット)」というものを使います。
この量子ビットは、0でも1でもなく「0と1の両方を同時に持つ」ことができます。
この特殊な性質のおかげで、量子コンピュータは特定の種類の問題を非常に高速に解くことができます。
例えば、複雑な数式の解を見つけることや、膨大なデータを一瞬で分析するようなことが得意です。
ゲーミングPCよりも高性能?量子コンピュータでゲームがサクサク動くのか?
「量子コンピュータはすごい性能だから、ゲーミングPCにも使えたら最高だ!」と思うかもしれませんが、実際のところ、量子コンピュータはゲームに向いていません。
どうしてかというと、量子コンピュータは「特定の問題」に対してのみ強力だからです。
例えば、今のゲームやアプリは、映像処理やユーザー操作に反応するリアルタイム処理が必要ですが、これは現在の古典的なコンピュータが得意な分野です。
ゲーミングPCは、CPUやGPUを使ってこれらの処理を物凄いスピードでこなします。
量子コンピュータはこういう処理をするために設計されていないため、仮に重たいゲームを動かそうとしても、ゲーミングPCほど効率よく動作することはできません。
つまり、量子コンピュータはゲームに適したマシンではないのです。
むしろ、量子コンピュータが得意なのは、例えば科学のシミュレーションや、膨大で非常に複雑な計算問題、または暗号解読のような分野です。
そういった領域では、ゲーミングPCの何億倍も高性能ですが、ゲームに対してその力を発揮する場面はまず無いといって差し支えるないでしょう。
将来的にゲームも得意になるのか?
将来的に量子コンピュータがゲームにも強くなる可能性はあるかもしれませんが、その道のりは遠いと考えられます。
現在のゲームは、映像処理やリアルタイム反応を重視しており、こうした処理は古典的なコンピュータが得意とします。
量子コンピュータがこれらの分野で優位性を発揮するには、量子ビットによる処理が非常に安定し、エラー率が低く、リアルタイムで高速な処理を行えるようになる必要があります。
また量子コンピュータはこれまでのCPUやGPUと全く異なるアーキテクチャを持っているため、ゲーム開発そのものを根底から設計し直す必要があります。
これは異なるハード間での移植(例えばPlayStationからSwitch)レベルの話ではなく、もっともっと大変な作業。
例えるなら「クラシックピアノ曲を全てドラムセットで完璧に演奏しようとする」ようなものです。
ピアノは、複雑なメロディや和音を滑らかに奏でることができます。
一方、ドラムセットはリズムを刻むのが得意で、ピアノと全く異なる役割や音の出し方を持っています。
どちらも音楽を演奏するための楽器ですが、それぞれが得意とする役割は全く異なります。
同様に、現在のゲーミングPCは、リアルタイムで映像処理やゲーム内の物理演算、ユーザー入力への素早い応答など、ゲームに特化したアーキテクチャを持っています。
一方で、量子コンピュータは問題解決のための「計算力」に優れていますが、映像処理やインターフェースの制御には不向きです。
ピアノ曲をドラムセットでそのまま演奏しようとするのが難しいのと同じように、ゲーミングPC向けのゲームを量子コンピュータで動かすためには、根本的な仕組みやアプローチを大きく変更する必要があります。
直接的にそのまま移植するのは非常に困難で、「アーキテクチャの最適化~」なんて話でもなく、現実的には不可能に近い作業と言えるでしょう。
したがって、将来的に量子コンピュータがゲームでも強くなる僅かな可能性はあるものの、まだその日は遠いと考えられます。
現在のゲーミングPC VS 量子コンピュータでのゲーム性能比較
先ほど説明したように、そもそものアーキテクチャが異なるので単純比較は難しいのですが、「勝負するとしたら」と仮定して、現在のゲーミングPCと量子コンピュータでどの程度差があるのか比較してみたいと思います。
Intel Core i7-14900KとNVIDIA RTX 4090を搭載したハイスペックなゲーミングPCと、現在の量子コンピュータ。
ゲームソフトは「Cyberpunk 2077」を動作させた場合の予測スコア(0~100点)を比較します。
ゲーミングPC(Intel Core i7-14900K、RTX 4090)
・性能評価: 90点
・動作予測:
Cyberpunk 2077はUltra設定でも非常にスムーズに動作し、レイトレーシング(光の反射や影のリアルな再現)もほぼ最高品質で楽しむことができるでしょう。
解像度4Kでも安定したフレームレートを維持し、リアルタイムの応答性も非常に高いです。
大規模なゲームワールドを処理するのに十分なパワーを持ち、グラフィックスとゲームプレイの両面で非常に快適なプレイが可能です。
量子コンピュータ
・性能評価: 10点(2024年の現状)
・動作予測:
現在の量子コンピュータはゲームを動かすことすら不可能です。
超絶理論で強引に「Cyberpunk 2077」を動作させたとしても、リアルタイムの処理が得意ではないためフレームレートは極端に低くなり、映像やゲームの反応も非常に不安定。
今の段階では、量子コンピュータはこうした映像処理やユーザーインターフェースをリアルタイムに処理するための設計ではなく、エラー修正やデータの安定性にも課題があります。
両者のスコア比較
機種 | 性能スコア(Cyberpunk 2077での予測) |
ゲーミングPC (Intel i7 14900K, RTX 4090) | 90点 |
量子コンピュータ | 10点 |
現時点では、ゲーミングPCが圧倒的に優れたゲーム体験を提供します。
一方、量子コンピュータはゲームに向いておらず、その性能を発揮できる場面はまだ限られています。
将来的には量子コンピュータの技術が進化し、ゲームの処理にも適応する可能性はありますが、現状ではその可能性は低いと言えるでしょう。
量子コンピュータは将来、現在のPCに取って代わるのか?
量子コンピュータが現在のPCに取って代わるかどうかは、専門家の間でもまだ議論が続いています。
しかし、近い将来において、すべてのPCが量子コンピュータに置き換わる可能性は低いとされています。
理由は量子コンピュータが得意とするのは特定の複雑な計算やシミュレーションであり、日常の作業や一般的な処理は古典コンピュータの方が効率的だからです。
適材適所という言葉があるように、目的や作業に適したツールを使うことが大切です。
毎日の通勤に燃費の悪い高級車を使うのはコスパ悪く、軽自動車やハイブリッド車のほうが適していますね。
ちなみに量子コンピュータは電力バカ食いです。
ゴリゴリにオーバークロックした超ハイスペックゲーミングPCよりも、はるかに多くの電力を消費します。
多くの量子コンピュータは極低温で動作させる必要があり、温度を絶対零度(-273℃)近くに保つための冷却システムが膨大なエネルギーを消費します。
この冷却システムには、大規模な冷却装置や特殊な設備が必要で、通常のPCが必要とする電力と比較すると非常に多くの電力が使われます。
また大規模なインフラも必要です。
さらに、量子コンピュータ自体の技術はまだ発展途上であり、エラー修正や量子状態の安定性を保つために多くのリソースが必要です。
そのため、計算そのものが効率的であったとしても、全体としては古典的なPCよりもエネルギー効率が悪いのが現状です。
将来的には量子コンピュータが省電力化する可能性もありますが、どちらかに統一されるのではなく、上手に棲み分けが進むのではないでしょうか。
まとめ
量子コンピュータは、通常のコンピュータとは異なる仕組みで動き、特定の問題に対して非常に高い性能を発揮します。
しかし現時点ではゲームや日常のコンピュータ作業に使えるものではありません。
ゲーミングPCの方が、ゲームに関してはずっと優れたパフォーマンスを発揮します。
もし量子コンピュータの力をフルに活用する時代が来るとしたら、それはゲームではなく科学や医療、ビジネスなどの専門分野。
その後に娯楽目的で利用されることもあるかと思いますが、それは遠い遠い将来の話。
とは言いつつも、技術的なブレイクスルーには期待ですね。
※本記事内の画像はCyberpunk2077の公式ページよりスクリーンショットを掲載しています。