Bluetoothといえば、イヤホンやキーボードを無線でつなぐもの。有線の煩わしさもなく、「コード引っかかった!」なんてことも起きない素敵技術です。
ちなみにBluetooth 6.0では、機器同士の距離まで細かく測れるようになりました。その機能が「Bluetooth Channel Sounding(チャネルサウンディング)」です。
鍵につけたタグまであと何メートル?スマホを持った人が、本当に車の近くにいるの?こうした距離をセンチメートル単位で測れます。
なお、似た役割の技術に、UWB(Ultra-Wideband:超広帯域無線)があります。
ん?じゃあ「Bluetooth Channel Sounding」があればUWBはいらないの?置き換えになるの?
というわけではなく、得意なことが違うので完全な置き換えにはなりません。
Bluetooth Channel Soundingとは?
Bluetooth Channel Soundingは、2台のBluetooth機器の間にある距離を測る機能です。
これまでのBluetoothでも、電波の強さから「近くにいる」「遠くにいる」はある程度予想することはできました。しかし、壁や人の体、機器の持ち方でも電波の強さは変わります。なので、正確な距離を測るのはちょっと苦手でした。
Bluetooth Channel Soundingは、電波の位相と往復時間を調べます。Bluetooth規格を管理する業界団体「Bluetooth SIG」によると、初期の実装では誤差±20cmほどだったとのこと。
また、条件が良ければ最大150mまでの距離で測定できるとしています。
ただし、150mは両方の機器が最大送信出力を使える場合の数字。家の中や街中で、いつでもどこでも150m先まで正確に測定できる!という意味ではありませんのでご注意を。
Bluetooth SIGの公式動画では、2台のスマートフォンがリアルタイムで距離を測る様子を確認できます。
どうやって距離を測ってるの?
Bluetooth Channel Soundingは、PBRとRTTという2つの方法を組み合わせています。なんだか難しそうな名前ですが、やっていることは意外と単純っぽいです。
PBRは電波のずれから距離を測る
PBRは「Phase-Based Ranging」の略。日本語では位相ベース測距とも呼ばれています。
片方の機器が電波を送り、受け取ったもう片方がレスポンスします。これを複数の周波数で繰り返し、送った電波と戻ってきた電波のずれを調べます。そのずれから距離を計算する仕組みです。
ざっくり言えば、電波が往復したときの変化を細かく見る方法ですね。従来のように電波の強弱だけで予想するよりも、ずっと正確に実際の距離が測定しやすくなります。
RTTは往復時間を確かめる
RTTは「Round-Trip Time」の略称。電波が相手へ届き、戻ってくるまでの時間を計測します。
Bluetooth Channel Soundingでは、暗号化したパケットを往復させます。PBRで出した距離が正しいかをRTTでも確認するわけです。
この仕組みはセキュリティ対策にも役立ちます。
たとえば車のスマートキーでは、離れた場所にある鍵の電波を中継して、まるで車のすぐ近くに鍵があるように誤認させる「リレー攻撃」があります。Bluetooth Channel Soundingで実際の距離を確認できれば、こうした不正な解錠を防ぎやすくなります。
また「正確に距離を測れる」特徴から、こんなシーンでも役立ちそうです。
- 鍵や財布につけた紛失防止タグを探す
- スマートフォンが近づいたときだけ車やドアを開ける
- イヤホンケースやゲームコントローラーの場所を探す
- 人が離れたらキーボードやマウスを休止状態にする
- 工場や現場で寸法や距離を測定する
特に使いやすそうなのは、もともとBluetoothを搭載しているイヤホンやコントローラー、紛失防止タグなどです。Bluetooth Channel Soundingに対応したBluetooth機器なら、Bluetooth通信を使いながら距離も測れるようになります。
では、同じように距離を測れるUWB(超広帯域無線)とは何が違うのでしょうか。
UWBとは何が違う?
| 比較 | Bluetooth Channel Sounding | UWB |
|---|---|---|
| 距離の測り方 | 主に電波の位相と往復時間を使う | 広い帯域の短いパルスで飛行時間を測る |
| 精度 | センチメートル単位。初期実装では誤差±20cmほど | 10cm級またはそれ以下を狙える |
| 追加の無線回路 | Channel Sounding対応Bluetoothチップが必要 | UWB無線が必要 |
| 得意なこと | 低コストで多くの小型機器へ距離測定を広げる | 高い精度と低遅延が必要な測位 |
| 関係 | 用途によって競合するが、組み合わせて使うこともできる | |
UWBは500MHz以上の広い帯域を使い、電波が届くまでの時間を細かく測ります。UWBの普及や規格整備を進める業界団体「FiRa Consortium」によると、10cm未満の高精度な測位も可能です。
UWBの強みは、やはり測位の精度です。スマートフォンや車のデジタルキーなど、位置をできるだけ正確に知りたい場面ではUWBが向いています。
一方、Bluetooth Channel SoundingはBluetoothを使って距離を測れるのが強みです。もともとBluetoothを搭載しているイヤホンやコントローラーなどにも使いやすく、UWBとは少し得意分野が違います。
そのため、Bluetooth Channel Soundingが登場したからといって、UWBが不要になるわけではありません。製品によっては両方を組み合わせて使うこともあります。
矢印で方向まで教えてくれる?
Bluetooth Channel Soundingで分かるのは、基本的に「あと何m離れてるの?」という距離です。
たとえば紛失防止タグを探すときに「あと2m」と表示することはできますが、「右に2m」「左にあります」といった方向までBluetooth Channel Soundingだけで分かるわけではありません。方向も表示したい場合は、Bluetoothの別の機能やスマートフォンのセンサーなどを組み合わせる必要があります。
つまり、「あと何m」は距離、「どっちにある」は方向で、それぞれ別の情報。
スマートタグなどを選ぶときは、距離だけ分かるのか、方向まで案内してくれるのかを確認するといいですね。
今あるBluetooth機器でも使えるの?
今使っているスマートフォンやイヤホンも、アップデートすればBluetooth Channel Soundingを使えるのでしょうか。
これは製品によって違ってくると思います。メーカーがどこまで対応するか?になってきますね。
Bluetooth Channel Soundingを使うには、機器側がこの機能に対応している必要があります。ソフトウェアの更新だけで対応できる製品もありますが、機器の中にあるBluetoothチップが対応していなければ使えません。
そのため、今あるBluetooth機器が一斉にChannel Soundingへ対応するわけではないのでご注意を。
新しく機器を選ぶときも、「Bluetooth 6.0対応」だけで判断せず、「Bluetooth Channel Sounding対応」と書かれているか確認するようにしましょう。非対応を買って「ならんやん!」となるのが一番ショックデカいです。
Bluetooth Channel Sounding対応機器でも、製品によって精度や誤差はある
Bluetooth Channel Soundingに対応していても、すべての製品が同じ精度で距離を測れるわけではありません。
距離の計算方法やアンテナの設計などは、メーカーや製品、設計思想によって異なってきます。また、壁や家具、人の体などが間にあると、測定結果が変わることも。
色んな電波ブリブリの都心環境と、山奥の環境では誤差が出る、みたいな感じですね。
そのため、同じ「Channel Sounding対応」と書かれていても、距離の測りやすさや安定性には差が出ると思います。Wi-Fiの通信速度もベストエフォート型(理論上ここまでイケる!)ですし。規格上は同じでも、実際に使ったときの性能まで同じとは限らないですね。
Bluetoothが「つなぐ」だけでなく距離も測る
Bluetooth Channel Soundingが加わったことで、Bluetoothは機器をつなぐだけでなく、機器同士がどれくらい離れているのかも測れるようになりました。「鍵まであと何m」「スマートフォンが車の近くにある」といったことが分かるため、紛失防止タグやデジタルキーなどでより活躍してくれそうな機能です。
UWBのほうが高い精度を出しやすい場面もあるため、Channel SoundingがUWBをすべて置き換えるわけではありません。それぞれ得意な使い方があり、製品によって使い分けられていきそうです。
また、「Bluetooth 6.0対応」と書かれていれば、必ずChannel Soundingが使えるわけではありません。使ってみたい場合は、製品の仕様に「Channel Sounding対応」と書かれているか確認するようにしましょう。